「どうなってるの?」「レースが成立するの?」と誰もが思う、現実とゲームを繋げる未来感溢れるゲームが任天堂から発表されました。現実の映像を画面に映しながらゲームが進行するようですが、一体どのような仕組みで成立しているのでしょうか?
システム系エンジニアが、本製品の技術やシステムがどのようなものかを予想してみました。
製品情報はすべての任天堂公式サイト、公式PVから読み取れる内容で、それらをベースに予想をしています。PVを先に見ていただけると記事の内容が入ってきやすいと思います。また画像は以下公式Webページからの引用です。
https://www.nintendo.co.jp/switch/rmaaa/index.html
https://topics.nintendo.co.jp/article/04e22e4a-bf68-4448-8975-3904fbfbbe0f
最新作「マリオカート ライブ ホームサーキット」の基本情報
製品情報・判明していること(2020/9/6時点)
- 発売日:2020/10/16
- 価格:9980円+税
- Switch(Light)本体+ラジコンを持ち寄れば4人まで対戦プレイが可能
- Switch Lightでも遊べるが、TVに映せるのはSwitchのみ
- 屋内専用(推奨環境:おおよそ3.5m×3mの段差がないスペース)
- マリオのセット、ルイージのセットの発売が予定
- セットの内容物:ラジコン、ゲート×4、矢印看板×2、充電用USBケーブル(ソフトは別途ダウンロード(無償))
今までリリースされてきたマリオカートの正式な続編というよりかは「派生作品」といった位置づけでしょうか?実機がある時点でレースゲームとしては特徴的すぎますね。
公式動画から読み取れること
- 自分の部屋をコースにできる。
- ラジコンが4つのゲートをくぐれば周回成立。
- ラジコンについているカメラの映像がリアルタイムでSwitch画面に表示される。
- アイテムは健在(コイン、アカこうら、トゲこうら、キノコなどを確認)。
- アイテムの効果・妨害を受けるとそれに連動してラジコンが加速/減速/停止。
- コースに仕掛けが存在する(プレイヤーを妨害するクリボー、パックンフラワー、氷の塊を確認)。
動画を見る限り、「ついにゲームもここまで来たか!」感が凄い!
どういう仕組みでレースが成立するのか?コースは?
ラジコンが4ゲートをくぐれば一周ということなので、各ゲートがチェックポイントの役割を果たすようです。
「ゲートを順番に1>2>3>4>1>2・・・とくぐり続け、最終周回の4>1を最も早く通過すれば勝ちなのね、だから処理的にはゲートをくぐったフラグを周回分回収し切ればすればいいのか」と最初は思いました。
しかし動画をよく見ると画面右上にコースマップが表示されています。
ん?コースの形状って分からなくないか?
動画をよく見てみると、ゲーム内カートがジュゲムに何かをぶっかけられているシーンがあります(0:57あたり)。最初は妨害アイテムやペナルティの一種かと思いましたが、どうやらペンキ的なものをかけられているようです。そして順番にゲートをくぐって1番ゲートに戻るシーンがあります。おそらくコースのマッピング作業が行われているようです。
つまりレース前に、ゲートを配置し、コース生成走行(マッピング)を行い、生成したコース情報を参加者全員のSwitchに共有してからレースが始まるのでしょう(PVの0:55~1:04でさらっと表現されています)。
またマッピングしたコースには妨害アイテム(パックンフラワーやクリボーなど)を配置できるのだと予想します(PVの1:30~1:34あたり)。
自宅だと作れるコース形状って限られますよね。妨害アイテムの配置を自分たちで決められるのであれば、組み合わせは無限なので飽きずに遊べることでしょう。
どのような技術が使用されているのか?
現実とゲームのシンクロ
多くの方が気にしているポイントでしょう。
ほぼ全ての情報はSwitchに集まるので、情報処理ではゲーム(Switch)側が主導権を握っており、逆に画面表現の大部分は現実(ラジコンのカメラが撮影する映像)がほぼ主導権を握っています。
う~む、これではどっちが正しいかの喧嘩が起きてしまうかもしれない。
冷静に考えれば現実は補正(ごまかし)が利かないので、ラジコン(現実)が全体の主導権を持つと予想します。
ここで気になるのはSwitch画面右上のマップ情報の表示です。
マップ情報には各プレイヤーの位置や設置アイテムがリアルタイムでアイコン表示されています。
プレイヤーの行った入力操作を、Switch側は完璧に把握・反映できますが、ラジコン側は完璧に反映させられるとは限りません。
例えば、別のラジコンや物体にとぶつかるなど、Switchへの入力操作と異なる動きをラジコンがした場合、どのようにマップとの整合性を保つのでしょうか。
可能性として以下3つを考えました。
- ラジコンが加速度センサを持っており、その値(位置情報のズレ)をSwitchに伝達している。
- コースマッピングの時点でコースの景色を記憶して、レース中のカメラ映像からラジコン位置の割り出し。
- コースマップの位置情報はラジコンの位置とは関係なく、Switchへの入力操作を元に移動するもので、現実とずれたらそのまま(ただしゲート通過のたびに補正される)。
おそらく3番目かと個人的に思います。1は結局ずれそうな点、2は技術的に高度すぎるので。
現在の最新技術(360°映像の処理、SLAM)を駆使すれば2番目もできそうですね。ハードスペックの要求も凄そうですが。
情報の流れを図示すると下のような感じです。複数人同時で遊ぶ場合はSwitch同士でもデータのやり取りが発生します。
ゲートの通過判定をおこなう画像処理
ゲートをただの物体とすると、ラジコンのカメラが取得した画像を処理してゲートの認識を行うのでしょう。しかし走ってるラジコンが収集する映像(画像)は随時変化するので真面目に画像処理(ゲートの検知)を行うのは処理が大きいです。
おそらくゲートにはシンプルな目印(例えば感覚の違うドット模様)が仕込まれておりそれを識別するのでしょう。通過判定は目印が一定サイズ以上になったら「通過」という判定になるのだと予想します。
コースを見やすくするAR技術
カメラの映像に対してゲーム画面上では様々なエフェクトが追加されています。
例えばゲートですが、飾り付きになっているときもあります(PVの0:42,1:26,1:32など)。これはゲートを識別した際にSwitch(ゲーム)側で映像に合わせる形でエフェクトをつけているのでしょう。
カーブの標識に関しても同様で現実よりかなり見やすいエフェクトが画面には表示されています(PVの1:29、1:33など)。
実際の自動車でもこういう技術は研究されていますよね。
さいごに
現実とゲームの整合性をいかに確保するかが最大の課題だと思います。位置情報の正確さとラグの少なさが重要なポイントで、そこの違和感が大きいとなかなか楽しめないでしょう。
製品版のクオリティが気になるところですね。
個人的に他に気になるのは、加速系のアイテムの仕様です。実際のラジコンの制御って難しいので速度が上昇すると事故ってしまう気がしています。
AR(拡張現実)を駆使しており、かつデジタルツイン感もある不思議な製品ですね。
技術の進歩は物騒なところから始まりますが、こうやって家庭向けにも先端技術がどんどん採用されるのはうれしいことです。
上でも少し述べましたが、360度マッピングしてVR内の現実世界をレースして遊ぶなんて未来を任天堂は描いているのかもしれません。
以下はゲーム関連の過去記事の紹介です。
FallGuysがなぜ流行ったのかを分析してみました。もしよければ読んでみてください。
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