自動ドアや照明の人感センサがどのように人を検知しているかを知りたい方向けです。多くの方はセンサがビームを出して反射したものを検知していると思っているでしょう。もちろん中にはそのようなセンサもありますが、身の回りにあふれる最もシンプルな人感センサはそのような仕組みではないのです。今回は最も簡易に人を検知する手法について物理現象とともに解説します。
人感センサは何を検知しているのか
人を検知する(以下人感)方法はいくつもあります。例えばAIによる画像解析、放射した電波の反射を受信する方法などが世の中にはあります。
ただ今回の話は、自動ドアや照明などで使用されるシンプルな人感センサについてです。
結論から言うとセンサが赤外線の変化量を検知しています。
ん?自分は赤外線なんて出してないぞ?と思った方、あなたからも赤外線でてますよ。
安価ながら便利な仕組みなため、多くの場面で実用されています。
これには熱放射(熱輻射)という現象が関係しています。
次で説明します。
熱放射(熱輻射)とは?
熱放射(熱輻射)とは、熱を持つ物体が電磁波を放出する現象です。その電磁波の波長は温度により決まります。
電磁波には、紫外線、光(可視光)、赤外線、電波などが含まれ、それぞれ波長の違いにより分類されています。
人の体温を含む身我々の身の回りの温度(0~40度)は、赤外線を放射する温度帯です。
可視光を放射する温度は、おおよそ1000K以上です。これくらいの温度になって初めて人が見て「赤く光ってる」と視認できます。
鍛冶屋で打たれるアチアチの鉄、鉄工所の溶けた鉄がそうです。オレンジに光っていますよね(鉄の融点は1811K)。
高温になった鉄が光っているのは鉄や金属特有の現象ではなく全物質に共通する現象であり、その光が人間に見えるか否かは温度次第というわけです。
さらに物体の温度を上げていけば、放出される波長が可視光(短波長側)に寄っていき、順番にオレンジ(3000K)、黄(4000K)、白(5000K)、青白く(6500K)と変化していきます(下画像)。
人感センサの原理
話を人感センサに戻します。
自動ドアの上にいる黒い物体、人感センサ付きLED電球のてっぺんのぽっち、あれらは我々から放出される赤外線を根拠に「人がいる」と判断しているのです。
ただし人の「体温から放出される赤外線波長」を検知して「人がいる」と判断してるわけではないです。もしそうしてしまうと着ている服の厚さや気温などの影響で検知できなくなってしまいます。
その対策として「検知している赤外線の波長が変化したら人がいると判断する」仕組みになっています。「人の表面温度は地面・床のそれとは異なる」という前提で成り立っているわけです。
順序をまとめると以下の通り。
- 人(熱源)が検知範囲に侵入した
- 検知範囲で温度の変化が発生した
- センサの受光している赤外線が変化
- 検知と判断
センサが赤外線の変化を検知できるのは、人がある程度大きく動いた場合です。
なのでトイレの個室でスマホをいじる程度の小さい動作の場合は、熱源の移動がない(=赤外線の変化がない)と「人はいない」と判断され照明が消えてしまうのです。
ちなみに使用されているセンサ素子は、誘電体の一種である焦電素子です。
また動作が大きくても、周辺環境との温度差が検知されなければ「人はいない」と判断されます。
暑い日には、地面・床の温度と人の表面の温度差が小さくなるので、人感センサの感度は低下します。
人感センサに検知されない人は影が薄い?
影が薄い、、、かはともかく周辺との温度差が小さい可能性はあります。
自動ドアが無視してくるときは、ドア上方のセンサ(黒い部分)に顔や手のひらを見せると経験上反応してもらえることが多いです。理由は単純で、服の表面より素肌のほうが温度が高いからです。
身の回りの機器の原理を知ると、自分なりに対策ができて楽しいです。
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